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奄美市教育委員会からの回答書を受けて遺族コメント

奄美市教育委員会からの回答書を受けて遺族記者会見コメント

2019年6月13日

https://mainichi.jp/articles/20190611/k00/00m/040/289000c

 

 本回答について一部マスコミ報道が先行したことから,本日,遺族が記者会見を開きました。以下はその際の発言要旨です。

 

 平成27年11月奄美市立中学校生徒の死亡事案に関して,本年4月23日,遺族は当事者である要田教育長に対して要望書を提出しその回答を求めたところ,同年5月31日に要田教育長から回答(以下「本回答」といいます。)がありました。本回答を受けて,改めて奄美市教育委員会,奄美市の教育行政の問題点が浮き彫りになりました。
 この現状を解決するにあたって遺族だけにその役割を担わせるのはあまりに酷なです。どうか,皆さんも他人事ではなく自分事として受け止め行動して頂きたいと思います。

 

以下,遺族代理人弁護士鈴木穂人のコメント

第1 はじめに

  1.  本件について,遺族の思いは当初から変わりません。「再発防止」であることを改めてお伝えしておきます。
  2.  昨年12月9日に,「平成27年11月奄美市立中学校生徒の死亡事案(以下「本件」といいます。)に関する第三者調査委員会」(以下「第三者調査委員会」といいます。)の調査報告(以下「本報告書」といいます。)が第三者調査委員会から公表されました。
  3.  本報告書を受けて,奄美市教育委員会要田憲雄教育長(以下「要田教育長」といいます。)又は元野弘学校教育課長は,これまで,本報告書に対する評価として,奄美市議会での答弁やマスコミ取材に対して,総じて「真摯に受け止める。」「真摯に受け止めている。」「遺族に対しては今後も丁寧に説明をしていきたい。」などと述べていました。
  4.  遺族もまた,本報告書の内容を真摯に受けとめ,また要田教育長らの前記の言葉を信じて,暫くは,本件の当事者であり今後の奄美市の教育行政を担っていく奄美市教育委員会(以下「市教委」といいます。)の動向を見守っていました。
  5.  ところが,その言葉が実際のこととして実行されている様子はありません。また,こうした言葉も,遺族が市教委や要田教育長から直接聞いた言葉ではなく,奄美市議会やマスコミ報道を通じてのみ知った程度です。
  6.  他方,要田教育長は,5月に立ち上げた再発防止対策検討委員会(事務局:奄美市教育委員会,主催:奄美市教育委員会)の存在をもって,本件や再発防止に向けた取り組みの免罪符にしている感があります。
  7.  なお,この委員会の設立に際しても,遺族は市教委から説明を受けることはありませんでした。
  8.  こうした状況に遺族は危機感を感じたことから,本年4月23日,遺族は要田教育長に対して,要望書を提出しその回答を求めたところ,同年5月31日に要田教育長から回答(以下「本回答」といいます。)がありました。
  9.  ところが,その内容は遺族の期待や希望を裏切るものであり,さらに奄美市教育行政への危機感,不信感を芽生えさせるものでした。果たして,今の市教委に再発防止に向けた取り組みが出来るのか。
  10.  本回答つまり市教委について,遺族が考える問題点は4点あります。
  11.  第1に本報告書の認定と異なる判断と評価をしていること。第2に再発防止に向けた具体的・主体的な行動をとっていないこと。第3に責任の所在が不明確であること。第4に遺族への謝罪がないこと。

 

第2 本報告書の認定と異なる判断と評価をしていること

  1.  遺族は,本報告書において,「明確な判断材料がないにもかかわらず,「市教委が一夜にして経緯を「いじめ」と断定したこと」が問題点として報告されていることについて(本報告書68頁,98頁),要田教育長としての評価を尋ねました。 
  2.  これに対して,要田教育長は,「当時,嫌な思いをした生徒からの訴えの中で,(中略),『同じことを何度も言われた』と訴えたとの報告を受けました」として,そのような報告があったことから,いじめ防止対策推進法の定義や指針等を踏まえて「いじめ」と断定した。そうした経緯故に,当時の状況下での当時の判断としては瑕疵はなかった」と述べています(本回答2頁)。
  3.  しかし,この下線部分にある事項は,本報告書には一切認定されていない事項です。
  4.  本報告書(69頁)では,「この時点(※本件直後の11月4日の夜のこと)で重要なことは,市教委において経緯は「不明」としており「いじめ」とは断定していなかったことである。ところが,翌11月5日の記録には,「いじめた側の子が責任を感じて自殺した。」と記載されることになる。同日午前10時より市教委3階会議室にて,市の臨時校長研修会が開催された(市立学校は全28校である。当該中学校の校長は出席していない。)。その際の市教委の説明が記録として残っている。その記録には,「いじめに関する自殺」,「5人の子どもが1人の子どもをいじめた」「→いじめた側の子が責任を感じて自殺した。遺書有。」等と記されている。質疑についての記録もあり,短く「Q.いじめという断定でよいか→よい。」と記載されている。これらは,臨時校長研修会の際の市教育長の説明や答弁と思われるが,まだ情報も限られているのにどうして一夜にしてそのような断定ができるのだろうか。」(引用おわり)と報告されています。
  5.  加えて,本報告書(79頁)では,同年11月11日に遺族宅を訪問した当時の校長は遺族に対し「いじめにつながることではない。」との発言があった旨を報告しています。
  6.  すなわち,本回答は,本報告書が把握していない事項(上記下線部分)を新たに持ち出し「市教委が一夜にして経緯を「いじめ」と断定したこと」を正当化しようとしています(少なくとも瑕疵はないと断言しています)。
  7.  また,少なくとも当時の校長は「いじめでない」と当時認識していたにも関わらず,下線部分のような報告があったとする本回答は本報告書の内容と矛盾しているところです。
  8.  つまり,本回答(2頁)は本報告書の調査内容及び評価とは異なるものです。
  9.  果たして,このような回答が,奄美市教委において「第三者調査委員会の調査結果についは真摯に受け止めている」といえるのでしょうか。明らかに,第三者調査委員会の調査結果に対する異議といえるのではないでしょうか。
  10.  仮に,本報告書が把握していない事項(上記下線部分)があったというのであれば,何故に,第三者調査委員会の調査中においてその旨を明らかにしなかったのか。
  11.  こうした要田教育長をはじめ奄美市教委の本報告書に対する言動不一致や,新たな事項(若しくは都合の良い解釈)を持ち出してまで自己を正当化する本回答は甚だ問題です。

 

第3 再発防止に向けた具体的・主体的な行動をとっていないこと

  1.  本報告書では,再発防止に向けていくつかの具体的施策の提言を行っています。それを踏まえて,遺族からも具体的事項の実施を要望しました。
  2.  ところが,本回答では,いずれも要望全てについて,「実施内容や実施方法など,再発防止対策検討委員会の中で検討していきたい」と回答し,事実上の白紙回答でした。
  3.  要望事項のいずれも,再発防止対策検討委員会の検討や判断を待つまでもなく,要田教育長や市教委の裁量と責任で実施できるものばかりです。しかし,それを実施しないというのは,市教委として主体性を欠くものであって自らの責任を放棄したものと言わざるを得ないところです。
  4.  実施しないということは,ここでもまた本報告書を真摯に受け止めるという言葉との矛盾,言動不一致があります。
  5.  加えて,本件及び本件報告公表後以降,要田教育長をはじめ市教委は本件や再発防止に向けた考えや取り組みについて,奄美市民に対して何らの説明をしていません。全て簡単なコメント程度です。
  6.  遺族が本要望書において記者会見の実施を求めても,本回答(5頁)は,「正式な見解は遺族に対して行えば十分である」として奄美市民への説明責任を放棄しています。
  7.  出来ることを実施しない,すべきことを実施しない,説明すべきことを説明しないという市教委の不作為は,本件を重要視していない,本件を遺族だけの問題として矮小化している(普遍性のある問題と認識していない),本件の風化を狙っていると評価せざるを得ないところです。

 

第4 責任の所在が不明確であること

  1.  遺族は,要田教育長や市教委が本報告書を真摯に受け止めているというのであれば,本報告書が問題点として上げた各事項(本報告書98頁から99頁)を踏まえて,責任の内容とその処し方を明らかにすることを要望しました。責任の内容やその処し方が不明確であれば,今後の再発防止策の主体的な実行と実現可能性が担保できないと考えたからです。また,通常の民間企業や行政庁であれば,然るべき責任が明示されるのが当然ではないかと考えたからです。
  2.  ところが,本回答は,責任の内容とその処し方を明らかにしませんでした。そればかりか,本回答は,「個人や組織の責任の所在を明確にすることは,本報告書の趣旨に反する」「教育委員会としては,本報告書を踏まえ再発防止に向けた取り組みを具体的に進めていくことが責任を果たすことにつながる」と回答しています。
  3.  この点,本報告書は,あくまでも本件自殺の原因について,法的責任を前提にしたものではなく特定の個人の責任を問うものではない旨(本報告書67頁)を述べているに過ぎません。つまり,本報告書は,本件自殺の原因(当日の指導)についての法的責任について言及しているに過ぎません。つまり,本報告書が問題点として上げた各事項(本報告書98頁から99頁)について,本報告書は責任論に何ら言及していません。
  4.  しかし,本回答は,個人や組織の責任の所在を明確にすることは本報告書の趣旨に反するという独自の解釈をして,自らの責任を明確にしませんでした。このような本回答の解釈は,本報告書を自らに都合の良い部分だけを切り取り,それをもってあたかも本報告書を真摯に受け止めているとの方便に利用してるだけです。
  5.  このような責任の所在やその処し方を明らかにできない要田教育長や市教委に再発防止に向けた取り組みが出来るといえるのでしょうか。
  6.  そして,そうした者が,委員や事務局職員を務める再発防止対策検討委員会は果たして信頼に足りる委員会といえるのでしょうか。

 

第5 遺族への謝罪がないこと

  1.  本報告書の公表後,要田教育長をはじめ市教委の然るべき方からの遺族に対する謝罪は一度もありません。昨年末,一度だけ,要田教育長は遺族宅に焼香に訪れましたが,直接の謝罪はなく言語不明瞭でした。今回の要望書においても,遺族は謝罪を求めたところですが(要望事項1,要望事項2),残念ながら直接の謝罪は得られていません。
  2.  なお,2019年5月8日付奄美新聞の報道では,要田教育長が「第三者委員会の調査結果を重く受け止め,今後二度と起こらないための再発防止対策について皆さんのご意見を聞きたい。遺族の皆様には大変なご心痛をおかけしまして,心からお詫び申し上げたい」と遺族への謝罪と再発防止への思いを述べたとして,遺族へ謝罪をしたかのような報道がなされていますが,これはあくまでも遺族のいない場所での発言にも関わらず,遺族への直接の謝罪があったかのような見出し記事であることを申し添えておきます。
  3.  遺族への謝罪がないことは,責任の所在やその処し方を明確にしない要田教育長や市教委の回答と裏腹の関係にあるかと思います。つまり責任がないので謝罪もしないという趣旨と受け止めています。

 

以下遺族本人からのコメント

  1.  要田教育長をはじめとする市教委の対応をみると,私たちは,総じて市教委は本報告書を真摯に受け止めておらず,言動不一致であると感じています。
  2.  私たちは,決して,市教委や教職員と対立をしようとしている訳ではありません。再発防止のために,教育現場において,私たちとしての経験や思いを活かしてもらいたいと考えています。
  3.  そうした思いは,市教委や教育現場への不信感があっては実現できないことも然りです。ましてや,辛い経験をした者であれば市教委や教育現場に対する不信感を拭い去ることは容易ではありません。
  4.  それでも,私たちはこれからも自らの子どもを中学校に通わせる親として,また他の家族にも起こりえる問題を何とか防ぎたいとの一心で,市教委との対話を試みています。
  5.  それ故に,私たちは,市教委や奄美市長に対して,第三者調査委員会の設置,再発防止対策検討委員会に私たちや第三者調査委員会の委員の就任,再発防止対策検討委員会への出席,教員研修会への参加等を要望してきました。今日の記者会見も然りです。
  6.  しかし,要田教育長をはじめとする市教委に対しては最低限度の信頼すらありません。
  7.  そもそも,本件当時,本報告書が問題点として上げた各事項(本報告書98頁から99頁)が市教委や学校にあったからです。そればかりか,今回指摘した先述のような市教委の問題点が露呈しているからです。
  8.  加えて,本件のみならず,本報告書公表後においても,奄美市立の小中学校において教諭による体罰が発覚しています。そのうち1件は当初は教諭から虚偽の申告があった旨の報道があります。
  9.  そして,その対応策についても通知文を送付した旨の対策が採られた程度の報道しかありません。
  10.  こうした本件以降の現状をみると,要田教育長をはじめとする市教委の現体制は,本件をはじめ過去の教訓を何らの糧にしておらず,同じ過ちを繰り返している体制であることが分かります。それはなぜか,体罰や本件のような不適切な指導と家庭訪問により生徒の自殺があったとしても,誰も責任をとらない体制だからです。
  11.  こうした要田教育長をトップとする奄美市の教育行政の現状を,奄美市長,奄美市議会,マスコミの皆さんのみならず,保護者をはじめとする奄美市民の皆さんがそれを黙認(容認)しているのではないでしょうか。
  12.  そのような状態で一番の被害に遭うのは子どもたちです。
  13.  本件はある家族の不幸な出来事で終わることではありません。重ねて申し上げます。私たちの思いは当初から変わりません。再発防止。もう二度と息子と同じような子どもを出さないこと,それが亡くなった息子の唯一の供養,生きた証になると考えるからです。
  14.  最後に,本報告書(104頁)提言6には,「本報告書は一人の人間の,生まれて,生きて,自殺へと追い込まれ生涯を終えた,命の記録である。この報告書に記された事実を基に,児童生徒の命を守る術を学び,次の命のためにどう活かすかは残された私たちの役割である」とあります。
  15.  どうか,皆さんも他人事ではなく自分事として受け止め行動して頂きたいと思います。

以  上

【参考】

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)

第四条 教育長は,当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人格が高潔で,教育行政に関し識見を有するもののうちから,地方公共団体の長が,議会の同意を得て,任命する。

2 委員は,当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人格が高潔で,教育,学術及び文化(以下単に「教育」という。)に関し識見を有するもののうちから,地方公共団体の長が,議会の同意を得て,任命する。

 

第七条 地方公共団体の長は,教育長若しくは委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認める場合又は職務上の義務違反その他教育長若しくは委員たるに適しない非行があると認める場合においては,当該地方公共団体の議会の同意を得て,その教育長又は委員を罷免することができる。

 

 本報告書

https://www.city.amami.lg.jp/somu/documents/daisansyaiinkaihoukokusyo.pdf

 遺族要望書

  http://soraumi-law.jugem.jp/?eid=108

 

(奄美事務所 弁護士鈴木穂人)

 

夏期インターンシップ生を募集しています。

 弁護士過疎地域への関心興味を持って頂くために,同地域で活動する弁護士法人空と海そらうみ法律事務所(奄美事務所,陸前高田事務所,久慈事務所,東京事務所)における就業経験(インターンシップ)を希望するインターンシップ生を募集しています。宿泊交通費は弊所が負担します。

 

【応募〆切りなど】

応募者多数のため2019年6月14日を〆切りとします。今回の募集では今年度の司法試験受験生を優先します。

 

【企画概要】

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  • インターンシップ期間は1週間を目安として双方の協議で決めます。
  • インターンシップ生の自宅最寄り駅からインターンシップ先(奄美事務所・陸前高田事務所,久慈事務所,東京事務所)への宿泊交通費,旅行保険料は弊所が負担します。
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  • インターンシップ生にはインターンシップの経験を報告書,ブログ掲載用の感想文などを提出してもらいます。

 

【採用条件】

  • 採用時点で成人であること。
  • ロースクール生,ロースクール修了生、予備試験合格者又は弁護士への就業を予定している学生。
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  • 弊所が実施する履歴書,志望理由書等の書面審査(又は面接審査)に合格した人。

 

【応募の際の留意点】

  • インターンシップを希望する方は,下記まで履歴書・志望理由書(書式自由)を郵便又はメール添付にてお送り下さい。
  • 提出書類には希望する事務所(奄美・陸前高田・久慈・東京),希望する時期・期間,メールアドレスを明記して下さい。
  • 採否を追って担当者から連絡します。

 

【応募・問い合わせ先】

鹿児島県奄美市名瀬末広町18−25グランセ末広ビル6階

弁護士法人空と海 そらうみ法律事務所奄美事務所  

電話0997-54-5588  FAX0997-54-5580

弁護士  鈴 木  穂 人

suzukihohito@nifty.com    

http://soraumi-law.com/

事務所説明会のご案内

そらうみ法律事務所は、東京(渋谷)本店のほかに、奄美大島(鹿児島県)、陸前高田、久慈(岩手県)に支店があり、弁護士過疎地での活動に法人として取り組んでいます。

「どんな活動をしているのか知りたい」という方や、「将来弁護士過疎地での活動をしたい」との考えがある方を対象に、事務所説明会を開催する予定です。

主に、司法修習生(73期予定・72期)を対象としますが、ロー生、学部生の方も申込可能です。

 

【日時】 2019年6月27日(木) 18時00分〜

    説明会後に懇親会も開催する予定です。

 

【場所】 東京事務所 東京都渋谷区渋谷4−5−6 渋谷トキワビル301

    渋谷駅もしくは表参道駅より徒歩10分

 

 

参加を希望される方は、件名に「説明会参加希望」と入力の上、

,名前

∈親会参加希望の有無

メールアドレス

をご記載いただき、下記の連絡先宛てに、メールをご送信ください。

 

(担当)在間(ざいま) zaima@soraumi-law.com

 

なお、応募多数となった場合、先着順で締め切らせていただきますので、ご了承ください。

久慈事務所加入のお知らせ

2019年4月22日付の記事でも触れましたとおり、2019年5月1日より、久慈ひまわり基金法律事務所がそらうみ法律事務所久慈事務所となり、我々の法人に加入しました。これまで久慈で執務してきた齊藤拓弁護士が、引き続き久慈事務所の所長を務めます。

 

これまでの活動方針はそのままに、法人全体で久慈事務所とのノウハウの共有、バックアップ体制の構築などをしていくことで、さらに地域の皆様に身近で頼りがいのある事務所となることを目指します。

 

引き続き我々の法人に対するご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

奄美市立中学校生徒の死亡事案に関して教育長へ要望書を提出しました。

 過日,遺族は奄美市教育委員会教育長に対して要望書を提出しました。昨年末の第三者調査委員会の報告,再発防止策の提案を受けてもなお未だに市教委から遺族に対して意見表明,謝罪,公式見解の表明がない状況です。そこで,遺族の希望と同意のもと要望書の内容をここに掲載します。

 奄美市の保護者,教員をはじめとする市民の皆さんへ。学校教育の中心にある市教委がこのような状況にあることを認識して下さい。その上で各々の場所で行動に移して下さい。そうすることで奄美市教育委員会がその姿勢を改めることを願ってやみません。

(奄美事務所 弁護士 鈴木穂人)


要望書

平成31年4月23日

奄美市教育委員会

教育長 要田 憲雄  殿

 

  1.  私たちの息子が自殺した件の第三者調査委員会(平成27年11月奄美市立中学校生徒の死亡事案に関する第三者調査委員会)作成の報告書(以下「本報告書」といいます。)の公表を受けて,私たち遺族は貴職及び奄美市教育委員会(以下「市教委」といいます。)に対して下記事項を要望します。
  2.  なお,本要望にあたっては,昨年12月29日の貴職の自宅訪問(焼香)を除いて,貴職及び市教委から,私たち遺族に対して,何らの意見表明,謝罪,公式見解の表明がないとの認識を私たち遺族が持っていることを申し添えておきます。
  3.  つまり,私たち遺族は,奄美市議会での答弁やマスコミ報道を通じてのみ,貴職や市教委の見解や状況を知るしか術がないところです。再発防止対策検討委員会(以下「検討委員会」といいます。)の設立に関する情報も然りです。
  4.  したがって,最近の奄美新聞2019年4月16日報道にあったように,「第三者委員会の報告は真摯に受け止める。」「遺族に対しては今後も,丁寧に説明していきたい」といった奄美市議会やマスコミに対する貴職や市教委の発言と,これまでの貴職や市教委の行動を照らし合わせると,それらは言動不一致であると評価せざるを得ないところです。
  5.  こうした現状を踏まえて,貴職又は市教委におかれましては,下記要望事項に対応されるよう強く要望します。

 

第1 貴職及び市教委への要望事項

  1.  本報告書によれば,息子の自殺の原因について,教員の「11月4日の生徒指導と家庭訪問時の対応が不適切」(本報告書67頁)であったことが認定されています。この認定について,市教委のトップである貴職はどのような評価をお持ちなのかを教えて下さい。
  2.  奄美市議会平成31年第1回定例会(3月7日)において,貴職は関誠之市議会議員の質問に対し,「1月15日に文科省に対して『指導死であった』という(修正)報告をした」「(指導死とは)不適切な指導により児童生徒が自死したものをいう」と答えています。本当にそのようなお考えであれば,息子を自死に追いやったことについて,遺族に対して謝罪の言葉があってしかるべきと思いますが,これまで謝罪の言葉が一言もないのはなぜでしょうか。その理由を教えてください。
  3.  本報告書によれば,明確な判断材料がないにもかかわらず,「市教委が一夜にして経緯を「いじめ」と断定したこと」が問題点として報告されています(本報告書68頁,98頁)。この報告について,貴職としてどのような評価をお持ちなのかを教えて下さい。
  4.  「不適切な指導」により亡くなった息子は,報告書によれば翌日の臨時校長研修会において「いじめた側」「加害者」の1人といったまったく根も葉もない事実無根の汚名を着せられました。情報も限られているなか貴職はなぜそのような説明をおこなったのか教えてください。亡くなった息子の尊厳,名誉に関わることですので,「丁寧に説明」してください。またそのことに反省があるのであれば,それを言葉にして息子と私たち遺族に謝罪してください。
  5.  本来,本件のような重大事故・事件発生時に責任を持って事後対応にあたらなければならないのは,学校・市教委自身です。本報告書によれば,平成28年8月16日,当時の名瀬中学校長が遺族父親に対して「第三者委員会の設立をお願いすることを再考できないですか」と詳細調査の再考を促すなど文科省背景調査指針に反する対応を行ったことなど,学校及び市教委の事後対応の問題点が報告されています(本報告書94頁以下)。このような対応について,貴職としてどのような評価をお持ちなのかを教えて下さい。
  6.  本報告書によれば名瀬中学校では日常的に教員による体罰(暴力)や暴言があったと報告されています(本報告書37項,103項提言4)。また,「教員が怖いと息子が私たち家族に言っていたこと」,「体罰を目にすることが息子にとって相当のストレスだった」と報告されており(本報告書60項),第三者調査委員会の記者会見ではそうした日常的な体罰が息子の自殺に影響を与えているとの発言がありました。また,本報告書の公表後にも朝日中学校では教師による生徒への体罰(傷害行為)があったと保護者から聞いています。教育長として体罰が常態化している学校現場についてどのような感想評価をお持ちなのかを教えて下さい。その上で,教育長として奄美市立学校での体罰撲滅を宣言して頂き,そのためにどのような具体的な対応策をとられるのかを教えて下さい。
  7.  前記1項乃至6項記載の問題を踏まえて,貴職又は市教委としての責任の内容(遺族に対する法的責任,懲戒処分等の組織内での責任,貴職や校長等の監督責任等)及びその責任の処し方を教えて下さい。未だ,私たちは貴職又は市教委から直接の謝罪や責任の処し方に関する報告を聞いていません。本件に対する責任の所在とその内容を明確にしないとなると,それは市教委に主体性や自浄能力がないことを自白するようなものであり,今後の再発防止策の主体的な実行と実現可能性が担保できないと言えます。
  8.  前記1項乃至7項の各事項について,貴職及び市教委の正式な見解を記者会見で明らかにして下さい。
  9.  奄美市議会平成31年第1回定例会(3月6日)における三島照議員からの本報告書の内容や遺族の想いについてどのように受け止めたのかという趣旨の質問に対して,貴職は「色々申し上げたいことが沢山あります。しかし,申し上げては良くないという思いがございます。」「言いたいこともあるんです。私どもは精一杯教育委員会として取り組んできたつもり。そのことが全て否定されている。声を上げたいが声を上げてはいかないという思いがあります。」と述べておられます。であれば,まさに本報告書に対する貴職のお考え(貴職の言いたいこと,貴職が声をあげたいこととされる事項)をお聞かせ頂きたいと思います。特に,貴職が取り組んできたつもりという市教委の取り組みのうちどの点が本報告書で否定されたとお考えなのかをお聞かせ下さい。その否定されたとお考えになる部分をはじめとして前記1項乃至7項に対する貴職のお考えや対応を明らかにして頂かない限り,具体的な再発防止策が主体的に実行できるはずがありません。それが明らかにならない限り,今後,市教委が取り組む再発防止策への信頼や期待は揺らぐこととなります。
  10.  検討委員会の設置内容(目的,予定,委員の氏名・所属),その経過,結論を私たち遺族に対して,適時説明をして下さい。なお,本日現在,先述の報道のような遺族に対する丁寧な説明がなされているとは到底言えません。
  11.  最後に,上記の各要望事項は,検討委員会の報告を待つまでもなく,貴職の責任と裁量で明らかにできる事項ばかりです。市教委のトップとして主体的な回答を求めます。

 

第2 再発防止対策検討委員会に対する要望事項

  1.  本年5月に設置予定の検討委員会の委員として私たち遺族または遺族団体の責任者,現役生徒又は卒業生を加えて下さい。仮に,それを否定される場合は,その理由を明らかにして下さい。遺族や生徒といった当事者の声が検討委員会の議論や提言に反映されない限り,それは当事者なき再発防止策と言わざるを得ません。遺族からのヒアリング,現役生徒や当時の生徒からアンケート,ヒアリング等の方法で再発防止に向けた考えを募ることは何ら難しいことではありません。
  2.  検討委員会の委員として,第三者調査委員会の委員を加えて下さい。本報告書において,本件の事実関係をつぶさに調査してきた上で再発防止策を具体的に提言している第三者調査委員会の知見,経験,意見を活かさない限り,それは「第三者調査委員会の報告は真摯に受け止める」という貴職や市教委の言葉を空疎なものにするばかりか,貴職や市教委への信頼を失わせることになります。
  3.  本報告書の提言6では,兵庫県加古川市を参照に,奄美市において各提言(提言1から提言6まで)を実行するための具体的な年次計画を作成し,その進捗状況を定期的に確認,公表するシステムの構築が要請されています。実際,兵庫県加古川市では,そうした提言が履行されているか否かをチェックする第三者機関を設置しているところです。今後,検討委員会が再発防止策を提言し,それに基づき市教委や各教育現場が再発防止策を実行する際には,兵庫県加古川市と同様の第三者機関を設置した上で,本報告書の提言(提言1から提言6)や検討委員会の再発防止策が画に描いた餅とならぬようにして下さい。そのためにも,第三者機関のメンバーには本報告書を作成した第三者調査委員会の委員の方を選任して下さい。私たち遺族もそのメンバーに入ることを希望します。
  4.  再発防止のために本提言で例示のあったような次のような具体的事項を実施して下さい(本報告書105頁,107頁)。
  •  教職員会議,職員会議,いじめ防止基本方針の策定,生徒指導の手引きの改訂時などの場面で本報告書を活用して下さい。
  • 本報告書についての市民への説明会を行って下さい。
  • 市教委や教職員間,地域保護者,有識者らを交えた意見交換や協議の場を設けて下さい。
  • こうした各具体的事項を実施する際には,本報告書や本提言の趣旨や目的を一番理解している第三者調査委員会の委員の方々を講師等として派遣して下さい。
  • 市立学校で勤務する教職員に対して本報告書を教材とした研修会を実施して下さい。その際の講師として第三者調査委員会の委員の方々や私たち遺族を講師として迎えて下さい。
  • いずれの事項も単年で終えるのではなく継続的に行って下さい。

 

第3 おわりに

  1.  以上,私たち遺族の要望について,平成31年5月末日迄に書面にて御回答下さい。書面交付の際には面談をして下さい。
  2.  息子の自殺は私達私たち家族だけではなく,友人たちや保護者,先生方まで誰も予期せぬことでした。
  3.  本報告書72項で報告されているように,平成27年11月5日の臨時保護者会での学校と保護者のやりとりのなかで,ある母親が「このようなことがどこの子にも起こりうるということではないか。」と発言しています。この発言のように,今回のような指導が生徒を追い詰めるという事件は,どこでも起こりうる可能性があります。現に息子が亡くなったあとにも,報道で知る限り広島県府中町,福井県池田町そして鹿児島市,と息子と同じように先生の指導後に子どもが自殺をするという事例が発生しています。
  4.  このような悲しい事件が起きないように,今回出された再発防止の各提言を確実に実行し,二度と息子のような悲しい事件が起きないようにしたいと考えております。
  5.  繰り返しになりますが,私たち遺族が心の支えにしていることは,息子のような子どもが出てこないこと,再発防止に尽きます。そして,その根幹は,貴職をはじめ市教委,学校及び教職員が,本報告書を自分のこととして受け止め,学校や教育のあるべき姿について考え,行動することだと思います。そのために,私たちも保護者,奄美市民として労を惜しまないつもりです。
  6.  しかし,残念ながら,本日現在,貴職や市教委からの態度や言動からは再発防止に向けた気概を全く感じ入ることが出来ないことを申し添えておきます。