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ブログAlways blue skies behind the clouds

社会福祉セミナー「地域で取り組む権利擁護」に参加してきました

 雪舞う2月11日。鹿児島市内にて開催された社会福祉セミナー「地域で取り組む権利擁護」(鹿児島県社会福祉士会主催)に鈴木と菅野が参加してきました。このセミナーは,社会福祉施設,医療機関,学校,行政,社会福祉協議会といった現場での権利擁護の実践報告を中心とした恒例企画です。今年は県内各地から60名近くの参加者がありました。

 その中で,鈴木は「地域で取り組む権利擁護−奄美での成年後見・刑事弁護を中心に−」と題し,弁護士・社会福祉士として,奄美大島群島での権利擁護の活動について講演をしました。拙い講演ながらも,高齢者支援,障害者支援と刑事弁護にまたがる問題に言及し,関係者の方々にも共感して頂ける部分があったかと思います。

 他にも,久木崎祐一さん(いちき串木野市地域包括支援センター)・福里千恵美さん(鹿屋市・児童家庭支援センターつながり)・江之口博行さん(肝属地区障がい者基幹相談支援センター)の3名による権利擁護の実践報告が行われました。

 その中で特に興味深かったのが福里さんの報告です。福里さんが勤務する「児童家庭支援センターつながり」では子どもの権利擁護の一環として,離婚後の面会交流の場を提供しているとのことでした。さらに,講演後には同じ地域で調停委員をされている方から同センターでの面会交流の意義についてお話を伺いました。こうしたお話を聞くと,同様の試みを奄美でも実践しなければと思います。福里さんの活動を参考例として,まずは協力してくれる組織やマンパワーを確保しなければ,奄美市といった行政機関への働きかけが必須だとも思います。

 また,3名の報告者から,相談や支援時における,それぞれの心がけや工夫なども教えて頂き,大いに共感したところです。

 最後に,我々弁護士の日常的な仕事を振り返ると,「これは民事事件の問題」「これは刑事事件の問題」「これは福祉の問題」などとはっきりと線引きができる問題はむしろ少数です。相談者や依頼者の皆さんが抱いている不安や問題を真に解決するためには,従来の弁護士業務の枠を超えて活動していくことが必要になってくると思っておりますので,こうした交流の機会は大変ためになる時間でした。

 主催者,参加者の皆様,これに懲りずにまたお声かけ下さい。今後とも色々と議論,交流,共有が出来ればと思っています。

 

(奄美事務所)

陸前高田市・包括的虐待防止関係機関連絡会議に出席しました

陸前高田事務所の瀧上です。


先日開かれました、陸前高田市・包括的虐待防止関係機関連絡会議に出席しました。
これはちょっと変わった会議で、高齢者・配偶者・児童・障がい者といった、弱者に対する虐待を防止する立場にある機関(公的機関・民間機関含め)が集まって情報交換するというものです。

 

会議では、陸前高田市の虐待事案の事例などが発表されていたのですが、こうした一見のんびりとした場所でも、やはり虐待というものはあるのだなと感じた次第です。

 

当職が弁護士として関わることが多いのは、配偶者に対する暴力(DV)事案でしょうか。震災後、地域のDV事案が増えていることは、統計的にも現れていますし、当職も業務を行っていて感じるところです。震災後生活状況が悪化している世帯が多く、それが遠因となっているのかもしれません。

 

当地の方々は、我慢強く、また、世間体などを気にされる方が多いため、虐待事案がなかなか表面化しない傾向があるように思います。

 

しかし、弁護士や福祉機関などの第三者の介入により、事態が良くなったケースは確実に存在します。何十年と苦しんでこられた奥さんが、新たな一歩を踏み出すことができたといったような件もあります。

 

虐待を受けた、また、虐待を受けている人を見た、といった場合は、まずはご相談することを考えて下さい。

陸前高田事務所 2月の相談カレンダー

陸前高田事務所では、現所長の瀧上(たきうえ)弁護士と、前所長の在間(ざいま)弁護士の2名の弁護士が、皆様のご相談をお受けしています。

2月の相談予定日は、下のカレンダーのとおりとなっています。

 

「これって法律問題なのかな?」と迷われることでも、お気軽に相談にいらっしゃってください。

 

東日本大震災当時、岩手県・宮城県・福島県にお住まいだった方は、法テラスの利用によってご相談料が無料となります。それ以外の方でも、ご相談料をいただかずにご対応できる場合がありますので、お問い合わせください。

 

事務所の営業時間外や休日でも、ご相談が可能な場合がありますので、まずはお電話でお問い合わせください。

 

【司法修習生・若手弁護士向け】弁護士募集のお知らせ

そらうみ法律事務所では、71期の司法修習生、もしくは、若手弁護士の採用を予定しています。

先頃、71期の司法修習生向けの採用選考を行いましたが、採用に至らなかったため、再度、募集をいたします。

 

入所後1~2年東京事務所で養成を受けたうえで、弁護士過疎地にある当事務所の支所へ赴任する、意欲ある若手弁護士を募集しています。

 

採用選考につきましては、随時行いますので、そらうみ法律事務所への就職を希望される方は、以下の応募書類をご送付ください。

【応募書類】
⑴ 履歴書
⑵ 志望理由書
※⑴⑵ともに様式は問いません。提出方法はメール添付でも郵送でもいずれでも構いません。

 

【応募・連絡先】
採用担当・在間宛にご連絡ください。

メールアドレス:zaima@soraumi-law.com

事務所住所:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷4-5-6 渋谷トキワビル301 そらうみ法律事務所 宛


【書類選考結果通知】
応募書類到着後1週間を目処に書類選考の結果を通知します。
書類選考に通過した方には、採用面接を受けていただきます。

ご希望の方には、応募に先立っての事務所訪問を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。

災害公営住宅の家賃増額(収入超過世帯)問題について

弁護士の在間です。

 

岩手県が災害公営住宅の収入超過世帯の家賃の減免制度を導入するとの報道がされました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26276620Z20C18A1L01000/

とても重要な問題ですので、長文になりますが、問題点を整理してみました。

 

  陸前高田市高田町の下和野災害公営住宅

 

 

一定の所得がある災害公営住宅への入居者の方の家賃に関して、現在、次のような仕組みが設けられています。

 

⑴ 月15万8000円を超える収入がある世帯は「収入超過世帯」とされる

 

⑵ 収入超過世帯は、入居後3年経過すると、_板造増額されるとともに、退去努力義務が課せられる

 

 

 

このような仕組みになっているのは、

 

・災害公営住宅はあくまでも一般の公営住宅制度の枠内の位置づけとされている(公営住宅法の規制に従う)

 

・一般の公営住宅は低所得の世帯が入居することを前提としており、月収15万8000円を超える世帯が入居することは原則として予定されていない

 

・そうすると、収入超過世帯は本来、災害公営住宅に入居することはできないが、震災で大きな被害を受けた地域では収入にかかわらず住む場所に困る人が出てくるので、災害公営住宅を整備して、収入超過世帯も入居できるようにした

 

・しかし、あくまでも公営住宅なので、入居後3年を経過したら、一般の公営住宅の本来のルールに合わせ、収入超過世帯については、_板造鯀額し、退去努力義務を課す

 

という理屈です。

 

 

 

この仕組みでは、次のような問題が起こります。

 

・自宅を失った被災世帯がその地域で住み続けたいと考えた場合、住居の選択肢は、主に、「自力で再建する」、「民間賃貸住宅を借りる」、「災害公営住宅に入居する」という3つになりますが、様々な事情で自力再建を断念せざるを得なかった被災世帯としては、民間賃貸住宅か災害公営住宅かの2択になります。

 

・その地域で、民間賃貸住宅が充実していれば、2つの選択肢を保てますが、東日本大震災の被災地域の中には、民間賃貸住宅が十分に供給されていない地域があります。震災前の民間賃貸住宅のオーナーの多くもまた被災者で、彼らが賃貸事業を再開するにあたっての支援がほとんどないという点もその一要素となっています。

 

・そういった地域では、被災世帯としては、災害公営住宅への入居しか選択肢がなくなります。

 

・そのような状況の中、月収15万8000円を超える世帯は、入居後3年を経過したら、_板造料額、退去努力義務を課されることになります。

 

・_板造料額の幅は、世帯の所得や間取り等によって異なりますが、「近傍同種家賃」に設定されます。この近傍同種家賃という単語がくせ者で、文字通り読むと、周囲のアパートの家賃と同じくらいの金額になると感じますが、実は、建設コストや将来の修繕費用等の諸要素を基に政令の規定に従って計算されることになっており、地域によっては、近隣のアパートの家賃とは大きくかけ離れた金額になる可能性があります。

 

・そうすると、家賃が上がったことによって、災害公営住宅に住み続けるのが困難となった収入超過世帯が、生活を維持しようとすると、民間賃貸住宅の供給が豊富な非被災地へと転出せざるを得なくなります。つまり、被災地からの人口流出、それも、地域の復興の担い手になる(行政から見ても税金をしっかりと払ってくれそうな)世帯が被災地から離れて行ってしまうことになります。

 

誰も得をしない、非常に残念な結末です。

 

 

 

今回の岩手県の減免制度の創設は、冒頭に書いた仕組みのうち⑵の △弔泙蝓⊆入超過世帯の増額となる家賃の上げ幅を、できるだけ少なくするという施策です。

記事を読む限り、最大でも月額7万7400円の家賃に抑えるということのようです。

 

収入超過世帯とされる方にとっては、家賃の値上げに対して非常に強い不安を感じていらっしゃったでしょうから、この減免制度が創設されたことは、ひとまず、良かったと思います。

引き続き、早期に、他の自治体(市町村)においても、減免制度を創設し、周知していただきたいと思います。

 

 

 

とはいえ、今回の減免制度によって、根本的な問題が解決されたとは言えないでしょう。

冒頭の仕組みの⑵の◆⊆入超過世帯の退去努力義務は課されたままだからです。

 

今の被災地の状況で、自治体が、収入超過世帯に退去を求めることは、現実にはないと思いますが、それが明確にされたわけではありません。

法令上退去努力義務は課されるが、事実上退去は求めない、とされているに過ぎません。

 

また、減免とはいえ、収入超過世帯とされた方達の家賃は上がります。被災地を取り巻く状況は未だ厳しく、他の住宅の選択肢がない中で、家賃が上がっていくことの経済的・精神的負担は小さくありません。

 

少なくとも、現段階では、最初に設定された家賃の金額に据え置くべきと考えます。

 

 

 

そうすると、減免制度による家賃値上げ幅の縮小化という対処に留まらず、収入超過世帯のラインを引き上げるという方向が望ましいのではないでしょうか。

 

法令上、自治体は、地域の特殊事情に応じて、収入超過世帯の基準を月収15万8000円から25万9000円まで、条例を制定して引き上げることが可能です。

つまり、条例を改正して、収入超過世帯の基準を25万9000円と設定すれば、それ以下の収入の方について、家賃の値上げはされませんし、退去努力義務が課されることもありません。

 

少なくとも、地域の民間賃貸住宅の供給事情が改善するまで(災害公営住宅以外の住まいの選択肢が生まれるまで)は、このような措置をとるのが適切だと思います(併せて、25万9000円を超える月収の方についての手当ても必要になります)。

 

地方議会の議員の先生方には、地域の住宅供給状況をよく調査し、被災者の声を聞き、地域の特性に応じた規定を検討してもらいたいと思います(これは、行政の問題ではなく、立法の問題です)。

 

 

 

また、もう一歩進んで考えた場合、そもそも、東日本大震災のように、地域の住宅供給事情を一変させてしまうような災害があった場合に、災害公営住宅の位置づけを、一般の公営住宅のルールの枠内に収めるのは相当無理があるように思います。

 

住宅供給政策の中に災害公営住宅をどのように位置づけるべきか、再検討される必要があります。

 

例えば、民間賃貸の事業者に対する支援についても、一体的に検討されるべきではないでしょうか。

 

 

 

なお、岩手県には特殊な事情があります。

 

岩手県内の被災市町村の多くでは、「市営(町営、村営)」の災害公営住宅と、「県営」の災害公営住宅の両方が整備されています。

そして、その家賃の設定等のルールは、市(町、村)の条例、県の条例でそれぞれ整備されているため、岩手県が減免制度を創設しても、それは県営の災害公営住宅にのみ適用されることになります。

 

もっとも、岩手県と県内の市町村は、この問題について、密に連携を取っているようですから、おそらく、近いうちに、県内の市町村においても、同様の減免制度が創設され、市営(町営、村営)の災害公営住宅でも同じような扱いとなると思われます

 

しかし、県全体で見たときに、市町村によって復興のスピードはそれぞれです。被害が大きかった陸前高田市では未だに民間賃貸住宅の供給は全く追いついていませんが、他の市町村では、民間賃貸住宅の空きが見られ始めたという話もあるようです。

民間賃貸住宅の供給が十分な地域においては、災害公営住宅の収入超過世帯の家賃を低く設定しすぎると、民業圧迫という問題も出かねません。

 

そのような事情の中、岩手県は、難しい調整を経て、今回の減免制度を策定したはずで、担当部署の方は、大変苦心されたのではないでしょうか。

 

とはいえ、県営と市営(町営、村営)の災害公営住宅を同じ市町村内に整備すると決定した段階で、このような問題が起こることは、容易に想像できたはずです。

整備する市町村毎に、その地域の復興のスピードに応じた柔軟なルールをこれまで準備できていなかったこと自体、災害公営住宅の位置づけに関する検討が十分でなかったことを示しているのかもしれません。

 

 

 

いずれにしても、この問題は、将来大きな災害が起こった際に、繰り返されるおそれがあります。

災害後の住まいの問題は、誰もが直面し得る問題ですので、多くの方に当事者意識をもって考えていただきたい問題です。

 

 

(弁護士 在間文康)