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ブログAlways blue skies behind the clouds

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インターンシップ生から感想が届きました。

2019年10月28日〜11月2日 奄美事務所でのインターンシップ

第73期司法修習生 横田 哲平

 

 羽田空港から約2時間、飛行機が高度を下げて雲を抜けると青く美しい海が広がっていました。東京で育ち、物心ついた時から田舎暮らしに憧憬の念を抱いてきた私は、1週間の島暮らしへの期待で、どこか浮き立ちながら奄美大島に降り立ちました。事務所のある名瀬までは空港からさらにバスで1時間ほどかかります。バスの車窓から景色を眺めていると、南国らしくサトウキビ畑が広がっていました。

 事務所では、弁護士と事務員の皆さんがあたたかく受け入れてくださいました。初日は法律相談に同席させていただきました。今回のインターンシップを通じて、何件もの法律相談を拝見しましたが、驚いたのは、かなり重要な契約についても口約束で済ませ、書面化していないケースが多いことです。長い付き合いの勝手知ったる者同士、信頼関係が極めて重視されているようでした。お互いの関係が良好な間はこうした口約束でも問題ないのですが、ひとたび紛争になった場合、契約の存在や内容を立証することが困難になります。紛争になった段階で相談に来たとしても、取ることのできる手段は限られてしまいます。こういったところに、奄美での活動の難しさがあるように思いました。

 翌日以降は調停や裁判にも同行させていただきました。奄美群島には、奄美大島にある名瀬支部と徳之島にある出張所の2か所しか裁判所がありません。そのため、出廷される依頼者の中にはわざわざ与論島から来られている方もいらっしゃいました。与論島から奄美大島までは、飛行機で約40分、1日1便のフェリーだと約8時間もかかります。経済的な事情からフェリーを利用される方も多く、その場合は1回出廷するごとに2日間が潰れてしまいます。1回の出廷に要する時間がせいぜい半日程度の都市圏と比較すると、実質的な裁判を受ける権利が不平等であることを強く感じさせられました。

 5日目と6日目は徳之島に伺いました。徳之島は奄美大島から飛行機で30分、フェリーだと3時間半ほどかかります。徳之島の伊仙町では、法律事務所まで行くことが難しい方のために定期的に出張相談が行われているそうです。徳之島では奄美大島以上にコミュニティの緊密さを感じました。島の入浴施設を利用していると、地元の方は私が島外者であるとすぐに見抜き、何をしに来たのかと声をかけてくださいました。弁護士が入った方がスムーズに進む問題にもかかわらず、相手方やコミュニティにおける関係の悪化を懸念してか、弁護士に依頼することを躊躇されている方もいらっしゃいました。このような地域においては、杓子定規に法律を適用するのではなく、将来の人間関係も踏まえ、より慎重に解決策を探っていく必要がありそうです。

 こうして島での1週間はあっという間に過ぎていきました。やはり奄美は青い空と海に囲まれた美しい島々でした。しかし一方で、低所得者が多いという経済的条件、口約束やコミュニティを重視する文化的条件、島が点在するという地理的条件が複雑に重なり、司法へのアクセスが著しく困難になっている現実も見えてきました。こうした問題に対して個人ができることには限界がありますが、島で出会った弁護士の方々は、それぞれが地域社会でかけがえのない役割を果たされていました。ほっとした顔で帰って行かれる依頼者の姿が深く心に残っています。自分の将来は不確定ですが、島の弁護士のように誰かに必要とされる存在になりたい、そう考えながら奄美を後にしました。

以上