そらうみ法律事務所では、南西諸島や岩手県沿岸部への赴任を前提とした新人・経験者の採用活動を継続していますので、司法過疎問題に興味関心のある方は、ぜひご連絡ください。広い日本、あなたの力を必要としている方がたくさんおられます。私たちの活動にぜひ参画してください。
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1 はじめに
私は、2月14日から同月16日までの3日間、そらうみ法律事務所浦添事務所の鈴木先生と同所奄美事務所の青松先生の沖永良部島での出張業務に同行する形で、インターンシップに参加しました。
3日間のインターンシップでは、依頼者・相談者の居宅に直接お伺いする出張訪問、島の遺言者の遺言執行者業務、役場主催の法律相談会など、離島における弁護士業務の最前線を拝見させていただきました。
この中でも、特に印象深い内容について、5つほど述べさせていただきます。
2 一つ目は、沖永良部島に来て初めて訪問した依頼者宅でのことです。
(1)訪問目的は、受任していた相続放棄の案件で、諸々の手続きが完了したことを報告することでした。
空港から依頼者宅までレンタカーで移動中、鈴木先生から相続放棄に関して、若干ソクラテス・メソッドを受け、本件でどのように弁護士として業務を行っていたのかを振り返りました。実際に本件で、鈴木先生が、どのような思考で、どのように相続放棄に向け行動していたのか、その思考プロセスを追体験できたのは、司法試験の短答式試験レベルでしか相続放棄について知らない私にとって貴重な機会でした。
相続放棄は、医師で例えるなら、傷口に絆創膏を張るような仕事。でも弁護士がいないこの島では、その張り方すら知らない人が多い。知らないうちに化膿して手遅れになってしまう。そのように仰っていた鈴木先生の言葉も印象的でした。
(2)さとうきび畑をひたすら通り抜け、依頼者宅に到着すると、鈴木先生とともに畳の客間へ案内されました。家族の写真や思い出の品が至る所に置かれ、家族愛にあふれる客間。それと対照的に、最愛の家族を失い、失意の底にいる依頼者。そのなかで、鈴木先生は、言葉を選びながら事件の報告をし、ひたすらに依頼者の想いに寄り添っていました。
私は、ただ依頼者の言葉に耳を傾け、出されたコーヒーとお茶を飲み干し、相槌を打ち続けることしかできませんでした。インターン生なので、はなからあの場で何か発言することが求められていたとは思っていませんが、あの場に同席した人間として、依頼者に何も声をかけることができないことへの無力感のようなものを感じていました。また、それと同時に、これから様々な研鑽を積み、いつか、あの時の鈴木先生のように、言葉を選びながら、依頼者とやりとりをし、依頼者の想いに寄り添える弁護士になりたいと思いました。
報告を終え、鈴木先生と共にご自宅を後にする際、依頼者の方から、私に「いい先生になってくださいね」とおっしゃっていただけたのも強く印象に残っています。あの場に同席することができて本当に良かったです。
3 二つ目は、鈴木先生による別の相談者宅での出張相談に同行した際のことです。
訪問目的は、B型肝炎給付金に関する法律相談であり、これから具体的な話をするとのことでした。ご自宅の前に到着すると、呼び鈴ではなく、玄関の引き戸を開け、「ごめんくださ〜い!」と言い、依頼者に来訪を告げる鈴木先生。これも、この島ならではだなと、感心しながら拝見していました。(2)と同様、客間に案内され、鈴木先生と共に着座した後、鈴木先生が相談者の方と軽い雑談をしたのち、鈴木先生がいくつか依頼者に質問を行って、本件におけるB型肝炎給付金を受給できるか否かのポイントなどをご説明されていました。
私自身、B型肝炎訴訟については、テレビのコマーシャルなどで見聞きするにとどまり、実際の給付金制度の仕組みやB型肝炎訴訟の内容については、存じ上げていなかったので、純粋に勉強になりました。
一通り、B型肝炎に関する説明と今後依頼者にしてほしいことの説明が終わった後、鈴木先生は、依頼者の方に、「ほかに何か聞きたいことはありますか」と尋ねられました。そうすると、依頼者は、「実は土地のことで聞きたいことが…」と切り出します。しかも、話を聞くと、権利関係でかなりの問題を孕んでいる内容でした。そこから、B型肝炎とは全く関係のない土地に関する法律相談が始まりました。
鈴木先生が依頼者のご自宅を訪ねなければ、鈴木先生があのとき「ほかに何か聞きたいことはありますか」と尋ねなければ、法的支援に結びつくことはなかったであろう内容を聞きながら、私は、弁護士によるアウトリーチの実際を目の前で見ることができたことに心を躍らせていました。
司法過疎地における司法ソーシャルワークの実際を知りたいと思い、今回のインターンシップに参加した者として、本当に貴重な経験でした。
4 三つ目は、鈴木先生の遺言執行者業務に同行した際のことです。
(1)その日は、まず役場の窓口にて、遺言者が死亡しているか否かについて弁護士職務上請求をし、除籍謄本を確認する作業に同行しました。その上で、現時点で今後遺言執行者がすべき事について、鈴木先生とディスカッションをしました。議論の軸にあるのは司法試験対策や法科大学院で勉強した民法の知識でしたが、今まさにディスカッションしているのは実際の事件、生きた事件であることを思うと、身の引き締まる思いでした。
(2)ディスカッションでは、本件遺言書に後行する遺言書の有無の確認方法について議論した際に、鈴木先生から、遺言執行者の負う善管注意義務の観点からどこまですべきかを考えようとアドバイスをいただいたことを覚えています。
確かによくよく考えれば、当然のことではありますが、これまでの私には持ち合わせていなかった視点であり、とても勉強になりました。
(3)また、現行民法の施行日について、沖永良部島を含む奄美群島は本土と時期が異なるとご指摘いただいたこともかなり印象的でした。最初、鈴木先生より、「現行民法っていつから施行されているんだっけ」と質問された時は、何を言っているのか質問の意図を掴めなかったのですが、「戦後、沖永良部島はいつ米軍から返還されたんだっけ」と質問の補足をされた際に、小笠原諸島や奄美群島、沖縄諸島は、戦後米軍の統治下にあり、統治中は旧民法がそのまま適用されていたことを思い出し、すごくハッとしたのを今でもよく覚えています。
旧民法が適用されるか、現行民法が適用されるかで、相続形態がまるっきり異なる以上、この事実は、弁護士業務をするにあたって必須の知識であるにもかかわらず、私はこれまでそのようなことに一切思いもよらなかったことに若干の恐怖心を抱いたくらいです。
沖永良部島のような様々な歴史を抱える地では、法令の適用も複雑になっていることに特に留意しなければならいないことを肝に銘じようと思いました。
5 四つ目は、鈴木先生と青松先生による役場主催の法律相談会に立ち会わせていただいた際のことです。
(1)まず、法律相談会が始まる前に、町が事前に申込者の受付をした際に作成した相談申込書を拝見させていただいたのですが、さながら法律事務所の事務局さんが作成したかような丁寧なものとなっていることに驚きました。私がその旨鈴木先生にお伝えすると、「でも皆さん法律事務所までは来ないんだよね」と鈴木先生はおっしゃっていました。
役場が町の中核になっていることや役場が開催するから相談者が来るという司法アクセスの現状を再認識する機会でした。
(2)また、今回の法律相談会では、先生方が相談者の方とどのようにコミュニケーションをとるのかについて勉強するという意味も込めて、鈴木先生と青松先生が交互に相談の主任を受け持ってくださいました。本当にありがたい限りです。
実際に、法律相談における先生方のコミュニケーション術について拝見させていただきましたが、鈴木先生も青松先生も、相談者のご様子や言葉遣いに応じて、相談者のご様子や言葉遣いに応じて、くだけた表現をしたり、理論的に事実確認をしたりするなど、上手くコミュニケーションの方法を変容させているのがとても印象的でした。
一日二日ですぐに盗める技術ではないことはわかっていますが、今回拝見させていただきました先生方のコミュニケーション術を参考に、これから司法修習に臨みたいと思いました。
(3)そして、法律相談の内容としては、和泊町・知名町ともに、土地の移転登記手続きや、相隣関係、不法行為、相続相談等、具体的な内容は様々でしたが、どれも不動産に関する相談であったことが印象的でした。また、一般的に見てそれなりに大きな契約(土地の賃貸借等)であっても口約束で契約を締結している事案が散見され、これもまた印象的でした。あとで、鈴木先生に確認したところ、沖永良部島は、対面での人間関係が特に大切にされており、郵便や書面を用いる風習があまりなく、それゆれに契約も(お互いの信頼関係に基づく)口約束でなされることが多いのではないか、とのことでした。
改めて、島内に法的な常識がそこまで浸透していないことと、司法過疎地における弁護士の必要性を再認識したひと時でした。
6 五つ目は、最終日、奄美大島に移動し、奄美事務所の岡本先生と青松先生と共に懇親会をした際のことです。
岡本先生は、そらうみ法律事務所が、どのように収益を上げているのか、奄美事務所では、月にどれくらいの経費が掛かり、これを賄うためには、どれほど稼がなければならないのかについて、丁寧に教えてくださいました。
「持続可能性がなければ、意味がない。そのために経済的合理性も考えないといけない。」との岡本先生のお言葉が今でも印象深く残っています。
3日間、沖永良部島で拝見してきた先生方の活動は、稼ぐべきところでしっかり稼いで収入を安定させる努力があってこそだと再認識し、改めて司法過疎地で弁護士業を営む難しさというものを考えるきっかけとなりました。
このほかにも、青松先生が受任されている事件に立ち会わせていただいた時のことや、和泊町役場の方々との懇親会に参加させてもらった時のこと、鈴木先生がレンタカー屋さんから大量のじゃがいもをもらっていたことなど、印象に残っている内容はまだまだたくさんあるのですが、延々と書き続けてしまいそうなので、僭越ながら体験記の内容としてはこの辺までにしておきたいと思います。
7 さいごに
この三日間、鈴木先生をはじめ、青松先生、岡本先生、そして在間先生には大変お世話になりました。あっという間の三日間でしたが、どれも非常に濃密で、先生方のもとでしか経験することのできないものばかりであり、司法過疎地における弁護士業務を知る上で、とても刺激的な毎日でした。
今回のインターンシップに参加して得た気付きを存分に活かし、これから自分の目指すべき法曹像を改めて考えていきたいと思います。
この度は、お忙しい中このような貴重な機会を設けていただき、本当にありがとうございました。
(東京大学法科大学院修了 赤間大晟)
以上
]]>しかし、5日間のインターンを通して、その二つの言葉だけでは決して表しきれない陸前高田という場所の深みと共に、私の乏しい想像力では思い至らなかった二つの言葉が持つ意味の重さを目の当たりにすることとなりました。
インターン先に陸前高田を希望した理由として、これまで漠然と、いつどこで災害が起こるかわからない日本で法曹を目指す以上、どこかで災害法務を学びたいと考えていたことがありました。実際に、今回のインターンの中で、災害関連死に関する裁判例等、東日本大震災に関する事案について勉強させて頂いたほか、防災から災害発生後に至るまで多様な場面での弁護士の関わり方の可能性についてお話を伺う貴重な機会をいただきました。
もっとも、東日本大震災直後の事件記録を見ると、被災地に特殊な事案ばかりではなく、離婚や相続、破産といった、人々の暮らす場所においてはどこにでも起こりうる事案が多数を占めていました。それは、陸前高田が「被災地」である前に、人が暮らす場所であるということ、陸前高田に暮らす人々にとってそこは、普段の生活を送るかけがえのない場所であり、震災の経験に拘らず、日々法律問題は生じ、弁護士を必要とする人々がいるのだ、という、当たり前のことへの気づきを与えてくれるものでした。また、5日間のインターンの期間に、地域コミュニティを大切に守られている方々のお話を伺い、地元のたくさんの美味しいお食事を頂いたほか、海をはじめとした美しい自然を見る機会をいただきました。そらうみ法律事務所の先生方と一緒に街へ出た際には、地元の方々が「先生!」と声をかけてこられる場面もありました。私の暮らしてきた東京にはない人々のつながりや、多彩な自然環境にふれ、他の場所では得難い豊かさがあることを実感したことは、陸前高田を深みのある立体的な場所として浮かび上がらせてくれる素晴らしい経験でした。
一方、これまでも知っているはずだった3.11の計り知れない影響の大きさに、愕然としたことも事実です。法律相談にいらっしゃる方々が、例外なく、「震災前は〜」「震災後は〜」という言葉を使って、ご自身の経験をお話しされるのを伺い、陸前高田の方々が、震災の記憶と共に、この13年間を過ごしてこられたのだということを強く感じさせられました。また、市役所を中心とした陸前高田の街は、高台に移され、山を削って造られた盛り土の上に全てが新しく整えられているように見える一方で、海沿いには建物のない開けた土地が広がっており、真新しい街が整備された高台と、海に至るまで視界を遮るものが何もない海側との対比は、心に迫るものがありました。海と陸とを隔てる要塞のような堤防から真っ直ぐに伸びる道の先には、東日本大震災津波伝承館があり、とても水の力とは信じられないような力でぐにゃりと曲げられた大きな橋桁や、原型を留めない消防車を目にしました。初めて陸前高田に降り立った時に感じた、清潔で整った街、という印象からはとても想像がつかないような展示品の数々を拝見し、復興のために尽力し続けておられる方々の努力や、「被災地」という三文字で表されることの計り知れない重大さに、圧倒されるばかりでした。
また、「司法過疎地」において、地域でたった一人の弁護士として、地域の司法サービスを一手に担う責任の重さに伴う、空恐ろしさをも教えていただきました。先生を頼って事務所にいらした方々のお話を伺う中で、自分に何かあれば、その場所で必要とされている司法サービスが滞ってしまうということの意味を実感し、そらうみ法律事務所の先生方が、その時に担当する場所以外の地域についても、地域の方々とのつながりを保ち、協力し合っておられることの重要性を、身をもって知ることができました。
陸前高田に実際に伺うまで、私が知っているつもりだった「司法過疎地」、「被災地」という言葉は、全く実感の伴わないものでした。その二つの言葉が表すことの大きさは計り知れず、インターンから戻った今も整理がつかず、これから法曹として歩む中でも考え続けなければならないと感じています。そのような問題に正面から向き合われ、弛まず質の高い司法サービスを提供してこられたそらうみ法律事務所の先生方には、敬服する思いです。
また、陸前高田は、それら二つの言葉に集約されるのではない、温かい人々と豊かな資源に恵まれた、人を惹きつける魅力を持った街でした。陸前高田に魅せられて移住された方々にお会いできたことも印象的で、陸前高田において5日間を過ごす機会をいただけたこと、本当に嬉しく思います。
陸前高田で、震災直後から地域の方々に寄り添い、信頼を得て尽力してこられた先生方のお仕事を間近で見せていただいたことは、自分が法曹として、どのような道を選ぶのか、また、何を学ぶ必要があるのか考え直すきっかけとして、とても貴重な経験となりました。不安を抱えて相談にいらっしゃった方々が、先生とお話し、相談室から出て行かれる頃には、重い荷物を降ろしたような、安心し、すっきりとした表情をされており、法律という道具を持って相談者の方々と誠実に向き合うことが、確かに、不安の中にある方の力になるということを感じました。先生方のような法律家に少しでも近づけるよう、努力していきたいと思います。
最後になりますが、お忙しい中、陸前高田を案内しながら、弁護士としてのさまざまなお仕事に同行させてくださり、美味しいお食事と共に面白く貴重なお話しを沢山聞かせてくださった富谷先生、インターン生の私にも、相談者の方とお話しされるときと同じように親身に優しくご指導くださり、2011年以降の陸前高田についてもご自身の経験を交えてお話をしてくださった在間先生、東京事務所から弁護士の思考について貴重なお話をしてくださった菅野先生をはじめ、インターンに受け入れてくださった先生方、私を暖かく迎え、いつも優しく気にかけてくださった事務局の柴田さん、菅田さんに、心より、感謝申し上げます。
東京大学法科大学院3年
]]>ご挨拶が遅れてしまいましたが、昨年11月に、東京事務所から奄美事務所に赴任いたしました。奄美の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、本日は、奄美地区障害者差別解消支援地域協議会に参加し、障害者差別解消法の改正についてお話しさせていただきました。
障害者差別解消法は、今年の4月1日に改正法が施行されます。
これまで民間の事業者においては、障害のある方への「合理的配慮の提供」が努力義務とされていましたが、4月1日の改正に伴い、これが法的義務となります。
困難を抱える方の人権を守るためにはとても大切な改正ですが、他方で、全ての事業者にこの改正が認知されているわけではなく、また、事業者としては、何をどこまで行うことが「合理的配慮」といえるのか難しく感じることかと思います。
本日の協議会の参加者のおひとりから、「一部の人が詳しい知識を持つよりも、多くの人が基本的な知識を持つ方が有益」というお話が出されましたが、まさにそのとおりだと感じました。
協議会では、私から、簡単にではありますが、改正法の概要や、実際に事業者が行うべき対応・方策などをお話しさせていただきました。
今後も、より多くの行政機関・事業者の方々に、この法律のことを認識・理解していただければと思います。
それとともに、私自身も、引き続き勉強を続け、理解を深めていきたいと思います。
(弁護士 青松淳紀)
]]>(もう1つは、沖縄県本部町にある海洋博公園です。)
浦添事務所は、2020年5月に開設しましたが、その約7か月前の2019年10月31日に発生した火災により、首里城は正殿を含む多くの施設を焼失しました。
当時の首里城は、沖縄戦で焼失したものを、1992年に再建したものでした。再び首里城を失うこととなった沖縄の皆様の心痛は察するに余りあります。
しかし、首里城は、現在、復興に向けて着実に歩んでいます。昨年末には、正殿の骨組みが完成したとのことで、復元の様子は、首里城公園の有料区域で見学することができます。
先日、私も復元の様子を見学に行きました。現在のところ、首里城正殿は、2026年に完成する予定とのことです。
浦添事務所も、首里城の復興とともに、地域の皆様に貢献できるよう、着実に歩みを進めて参ります。
(弁護士 長尾大輔)
]]>石垣事務所の米元です。
2月18日から21日まで、東京大学の法学部のディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク教授が来島し、
教授のフィールドワークにご一緒しました。
https://www.j.u-tokyo.ac.jp/faculty/dimitri_vanoverbeke/
教授の研究分野は法社会学で、
中でも今回は、司法過疎地における弁護士業務に焦点をあてたフィールドワークとのことで、
石垣事務所での実務に密着していただきました。
昨年は、弊所の在間弁護士が教授の法社会学の講義の中でお話させていただいており、
来年度以降の授業では今回のフィールドワークの内容も紹介していただけるかもしれません。
全国の司法過疎地解消の道のりはまだ道半ばであり、
教授のご考察も踏まえて、より持続可能な仕組みづくりを考えていきたいと思います。
また、教授の講義を受けて、司法過疎地での活動を目指す法曹が一人でも増えてくれたら、これ以上嬉しいことはありません!
(弁護士 米元 悠)
]]>久慈市は「北限の海女」の町とも呼ばれ、NHK朝ドラ「あまちゃん」の舞台になったことで有名です。「あまちゃん」をリアルタイムで視聴していた私としては、久慈駅の前で停まるバスを降りて、駅前デパートという建物を見たときに、ドラマで見た建物だ!と気分が高まりました。また、久慈市は日本有数の琥珀採掘産地でもあり、自然がとても豊かな地域でもあります。私は東北地方に足を踏み入れること自体が初めてで、もちろん久慈市に訪れたこともなかったのですが、今回、そらうみ法律事務所久慈事務所で1週間のインターンシップに参加させていただきました。
久慈事務所でのインターンシップは、毎日刺激的で非常に充実したものでした。齊藤先生と事務局の方々は、私に対して寒さを気遣ってくれたり、温かい言葉をかけてくださったりと、優しく接してくださりました。また、インターンシップ期間中に拝見させていただいた法律相談は数多く、その一つ一つがとても濃密なものでした。そのため、1週間という短い期間でしたが、学ぶべきところが多く貴重な経験となりました。法律相談や事件記録に触れて感じたのは、幅広く様々な案件があるということです。離婚、親権争い、面会交流、遺言、相続、成年後見、登記、売買契約、借金(多重債務)、自己破産(申立代理人側と管財人側の双方)、強制執行、刑事事件といったように多様な事件がありました。
インターンシップ期間中には数多くの法律相談に立ち会わせていただきました。これらの経験を通して感じたのは、「法律相談」といってもその内実は人間関係に関するご相談が多く、法的な解決方法を提示するだけではなく、依頼者の方に寄り添った対応が必要となるということです。
依頼者の方々のお話は、相談するきっかけとなった事件に関する事実のみならず、その背景事情といえる家族との関係や、自分のお気持ちなど、多岐にわたります。限られた時間の中でそれらのお話を聞いて、事件の解決方法を模索していく必要があります。相談を受ける立場からすれば依頼者の話をさえぎって解決方法を提示したくなるとおもうのですが、齊藤先生は決して依頼者の方の話をさえぎることも、そのお話を否定することもありません。先生は依頼者の方のお話を聞きながら要点をメモし、事件の解決に必要と思われる点を的確に質問する作業を通して、依頼者の方が心配に思っている点を過不足なく聞いて、現時点で最善と思えるアドバイスをされます。その仕事ぶりはまさしくプロフェッショナルというべきものでした。齊藤先生の仕事ぶりを間近でみることができたことは、大変貴重な経験であったと感じています。
久慈でのインターンシップを通して、弁護士という職業の社会的意義や責任を実感しました。私が1週間インターンシップで拝見させていただいた法律相談で取り扱う事件は、依頼者の方の人生において重要な意味を持ち、依頼者の方の人生の転機となるようなものでした。依頼者の方にとって人生の転機となるような事件に立ち会う弁護士の責任はとても重いものだと思います。齊藤先生は、依頼者の方からの期待や責任を感じつつ、依頼者の方の今後の人生を見据えたアドバイスをされていて、弁護士の先輩として尊敬すべき存在だと感じました。依頼者の方々にとっても、人生の転機となるような機会に齊藤先生に依頼できたことはとても幸運なことだと感じました。
齊藤先生は、依頼者の顔を見ると、なんとかして助けてあげたいと思うとお話されていた姿も印象的でした。私も将来、依頼者の方々のために一生懸命頑張ることのできる弁護士になりたいと思いました。
久慈の方々はとても優しく、どこから来たの?と話しかけてくれる方がたくさんいらっしゃいました。また、地元の料理はどれも美味しかったです。空気は澄んでいて、非常に素晴らしい場所です。久慈で、インターンシップを体験できたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。
齊藤先生、事務局の方々には、最後までとても温かく迎えていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
早稲田 大学大学院法務研究科3年生
]]>石垣事務所の米元です。
今回は、昨年に引き続き、石垣聴覚障がい者友の会にお招きいただき、
手話通訳の皆様にご協力をいただきながら、
聴覚障がい者の皆様に、
障がい者差別解消法上の合理的配慮や、個人情報の取扱いについて、
お話をさせていただきました。
今回は、私のみならず、自身もコーダ(Children of Deaf Adults)である
法テラス沖縄法律事務所の?江勇輝弁護士にも一緒に登壇して頂きました。
今年も、聴覚障がい者の皆さんが、積極的に質問をしてくださり、
あっという間の4時間になりました。
?江弁護士が、自己紹介を自ら手話で行ってくださり、
弁護士を身近に感じていただくいい機会になったかと思います。
今年もお招きいただき、ありがとうございました!
(弁護士 米元 悠)
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私たち弁護士の仕事は多種多様です。その中でも高齢者の問題は司法過疎地域においても共通の課題です。そんな課題解決の指針になるようなシンポジウムが昨年3月に那覇で開催されました。私も主催者の一員として準備や当日の司会を担いました。1年前のシンポジウムとはいえ内容は今も色あせることはありません。本報告は主催者である沖縄弁護士会及び九州弁護士会連合会の会報に掲載された私の拙稿を再現したものです。本稿が皆さんの老後・家族の老後・社会の仕組みを考えるきっかけになれば幸いです。
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シンポジウム「ちむどんどんする・おひとりさまの老後」
九州弁護士会連合会高齢者障害者の支援に関する拡大協議会 2023年3月25日
1 はじめに
はたして、私たちの老後は「ちむどんどんする」のか。「おひとりさまの老後」は誰しもが経験しうること。弁護士の多くが家事、後見、地域包括支援センターとの連携といった業務の中で自問自答している。他人事でもなく自分事でもある。そうであれば「おひとりさまの老後」の第一人者である上野千鶴子さんから話を聞こう、その上で福祉関係者、行政関係者と共に具体的な方法を議論し提言をしようということとなった。2023年3月25日、那覇市内の会場には、数年振りの来沖となる上野さん、主催者側15名、会場参加者86名、オンライン参加者120名が集まり、シンポジウムは3時間半にわたって開催された。
2 「おひとりさまの老後」の実態と危惧
「おひとりさまアゲイン」という自己紹介と共に上野さんの軽快な講演が始まった。
各種調査に基づく数字がおひとりさまの老後を物語る。90歳を越えて生きる確率は男性が4人に1人女性が2人に1人。老後を誰かの世話になる期間は平均9年から12年。高齢者世帯の独居率29%、独居生活者と同居生活者を比べると独居生活者の満足度が高い(おひとりさまは楽だから)。死の病院化(病院での死亡率が77%)。こうした数字を見ると改めて我々の実感が実態となる。
次に、上野さんは、政治的背景を分析する。2015年医療・介護一括法の施行を契機として、医療介護費用の抑制を目的として在宅医療・在宅看取りへの政策的誘導があった。
こうした背景をふまえて、上野さんのフィールドワークから、介護保険20年の成果として、福祉関係者の現場経験値が進化し、高齢者の自己決定支援が可能になっている旨の報告があった。その結果、癌患者を中心に、在宅生活、在宅介護、在宅ターミナル、在宅死が増えている。
もっとも、認知症について、政府の新オレンジプランの名のもと認知症の病院化が危惧されている。そこで、上野さんからは自らが入院しないための提言があった。つまり、独居認知症在宅を実現するには本人の意思決定支援として成年後見、身上監護、死後事務委任の3点セットが有効であるところ、上野さんは弁護士法人に依頼をしているとのこと。命と財産をお預ける上で、善意の個人はときに悪意の個人に変わることがあり、家族とは利害関係があることから、持続性のある弁護士法人に依頼をしたとのこと。なお、上野さんによれば「先生」と呼ばれる職業人は認知症になり易いのではないかという経験則と自覚があるようだ。
ところで、こうした介護力を実現してきた介護保険制度について、最近、政府が為そうとしている介護保険の改悪(制度の空洞化)についての警告があった。対象者の制限、原則2割負担、ケアプランの有料化、介護施設の人員配置基準の引き下げ、ホームヘルパーの報酬が最低賃金以下の実情(ホームヘルパー国賠訴訟)など、「ちむどんどんするおひとりさまの老後」と政府との緊張関係は続いている。
3 各地の実践例と課題
後半はパネルディスカッション。パネラーは4名。上野さん、北中城村福祉課長の喜納啓二さん、弁護士の山本和代さん、オンライン参加で東京都江戸川区社協の楠史子さん。4名の議論を川田浩一朗弁護士がコーディネートする。
冒頭、川田弁護士から「上野さんの提唱するおひとりさまの老後(在宅での老後)は実現可能なのか」という問題提起があった。それに応じるように90分間にわたる議論は多岐にわたり、時には上野節が炸裂し会場を沸かせた。
まず、北中城村から地域や沖縄の現状について報告があった。さらに江戸川区社協からは全国的にも珍しい「おひとりさま支援事業」の報告があった。その中で、在宅支援の限界(在宅から施設へ移行する背景)として、認知症の進行に伴い疲弊した家族などの意向、在宅介護を支えるための経済力の不足、煩雑な各種制度の存在、後見人の担い手不足が挙げられた。
この点、江戸川区では、高齢者に対し元気なうち(困る前)から地域支援ネットワークへの登録を、また日常生活自立支援事業の利用を促しているとのこと。そうすることで、救急時やその後の支援に可能な限り本人の意思が反映される、または本人が抵抗なく各種支援を受け入れることを目指す。その結果、本人が望む在宅支援につながり易いとのことであった。
次に山本和代弁護士から弁護士が担える役割として、財産管理契約、後見、死後事務委任契約、遺言作成などについて実践例も交えながらの報告があった。さらに施設や病院が求める身元保証や連帯保証について、身元保障サービス事業者については未成熟ゆえの問題点がある旨の指摘があった。
こうした現場からの報告に対して上野さんからは鋭い提言が多々あった。例えば、弁護士後見における身上監護については、時的限界やパターナリステッィクに陥りやすい現状を考えると、弁護士会が外部のNPO等に身上監護を委託をするなどの新たな事業の提案があった。また、沖縄(特に離島)は全国的に独居在宅の高齢者が少ない背景について沖縄の施設の多さではないかとの指摘があった。さらに身元保障制度については廃止または県などの公的機関が担うべきとの提言には筆者も強く共感した。
4 まとめ
上野さんからの指摘を受ける度に胸が痛くなる(ときには反発も覚える)。果たして「ちむどんどんするおひとり様の老後」は実現するのか。議論は白熱し時間が迫る中、上野さんからあった「認知症患者から自由を奪わないで欲しい」という言葉は、基本的人権を擁護する弁護士への大きな宿題となった。
また、上野さんからは、「超高齢社会を生きる道として、安心して弱者・要介護者・認知症になれる社会を創りたいという願いのもとで活動をしている。そこに(特に後見の意思決定支援に)当たり外れのない弁護士として参画して欲しい。」とのメッセージで基調講演は締めくくられた。果たして私たちの老後はどうなるのか。このシンポジウムを契機として当事者として弁護士として具体的な行動に繋げなければならない。
(浦添事務所 鈴木穂人)
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石垣事務所の米元です。
私は、全国B型肝炎訴訟沖縄弁護団に所属し、
集団予防接種の際の注射針等の使いまわしが原因でB型肝炎に感染した患者さんの法的支援を行っています。
今回は、教育啓発活動の一環として、西表中学校にお邪魔してきました。
私もB型肝炎の性質や、注射器等の使いまわしの説明を行いましたが、
主として、生徒の皆さんの琴線に触れたのは、やはり患者さんご自身の体験談でした。
集団予防接種が原因の感染なのに、母親からの感染や、女遊びでの感染を疑われたり、
何の根拠もないのに現在も歯科で受診を断られることがあったり、
ワクチン接種が必要になる子供たちに申し訳ない思いを抱いたりと、
単なる病気の苦しみ以上に、精神的に大きな負担を追うことを改めて実感しました。
感染症については、その感染症ごとに、
「感染経路についての正しい知識をもって、正しく注意する」ことが大切です。
それこそが無用な差別・偏見を防ぐ方法であることを、改めて学びました。
※ B型肝炎の感染は、体液や血液を通してなされるもので、日常生活(握手をする、一緒にお風呂に入る、同じ皿の食事を食べるなど)では、感染しません。
中学生の皆さんも一生懸命メモを取りながら聞いて下さり、
後日いただいた感想文も、患者さんのお話をよく理解してくださったものでした。
今後、同じような差別・偏見の広がりを防ぐ、素敵な授業になったと思いました。
今後もこのような機会を増やしていければと思っております。
興味をお持ちの学校関係者や保護者の方がいらしたら、ぜひ石垣事務所までご連絡をお待ちしております。
(2024年2月24日 八重山毎日新聞)
(弁護士 米元 悠)
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奄美の岡本敏徳です。
改暦を迎え早1月が経つ頃、既に奄美ではオオシマザクラが開花し、本土でも場所によっては梅香る時節となったようですが、遅まきながら、昨年までの振り返りをしつつ、本年の抱負を述べる趣旨で、愚筆をとらせていただきます。
平成28年10月、公設事務所所長経験者4名の弁護士により設立された弊法人は、昨年10月をもって創立7周年を迎えました。その間、同志は11名に増え規模も大きくなりましたが、創立当初からあった「地域の皆様に最も身近な存在でありたい」という願いは少しも変化することなく、私ども一同、展開する各地域の中で、業務に邁進して参りました。
ところで、先だっての創立7年の節、弊所弁護士一同は沖縄県浦添市にて2泊3日の合宿を開催しました。合宿自体は毎年開催しておりますが、弁護士が一堂に会する機会をもうけることで、上記願いの基軸性を再確認すると同時に、各弁護士が各地方で直面する課題・悩み、その他弁護士としての知見・経験の共有をはかっています。なお、昨年は、例年にはなかった試みとして、外部講師による研修を開催することとし、国吉大陸税理士(沖縄県中頭郡西原町にて、国吉大陸公認会計士・税理士事務所所長をされております。https://www.tax-hirotaka.com/)をお招きして、最新の税務に関するご講話もいただきました。
この数年間、私どもが本拠とする司法界は、技術の進歩や価値観の変容等、社会全体の変化によって様々な挑戦を受け、多くの場面で変革を迫られておりますが、先の願いは不変であることを確信する弊法人は、従来どおりにこれを基軸として、良質な法的サービスを提供して参る所存です。 本年もまた、弊所11名の弁護士が一丸となって、ご依頼者様の様々なお悩みに寄り添うサポートをし、展開する各地域の方々にとって必要な存在であり続けるために自問自答を続け、研鑽して参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
(弁護士 岡本敏徳)
]]>石垣事務所の米元です。
今日は、八重山圏域障がい者自立支援連絡会にお招きいただき、
障がい者が罪を犯した場合の支援について、お話しさせていただきました。
地域生活定着支援センター、保護観察所との共同で、
私は、主に事件発生から刑事判決確定時までの、弁護士が主として関与する部分についてお話ししました。
触法障がい者の再犯防止には、地域や福祉関係者の重層的な支援が不可欠であり、
刑事弁護人から協力をお願いすることも度々あるため、
双方の理解を深めるために、また顔合わせのためにも、とてもいい機会になったと思います。
ありがとうございました!
]]>主に77期の司法修習生を想定していますが、76期以前の弁護士も対象としています。
そらうみ法律事務所は、東京(渋谷)本店のほかに、久慈、陸前高田(岩手県)、奄美大島(鹿児島県)、浦添、石垣島(沖縄県)に支店があり、弁護士過疎地での活動に法人として取り組んでいます。
採用後は、東京事務所または浦添事務所で1〜2年養成を受けたうえで、弁護士過疎地にあるそらうみ法律事務所の支店への赴任を予定しています。
採用手続等については次のとおりです。
【応募書類提出時期】
随時 (定員に達し次第終了いたします)
【応募書類】
⑴履歴書 ⑵志望理由書 (⑴⑵ともに様式は問いません。)
【応募方法】 採用担当・在間宛にメールでご連絡ください。
メールアドレス:zaima@soraumi-law.com
件名に「採用手続応募」と入力のうえ、次の事項を記載し、応募書類をデータで添付して、メールをご送信ください。
?お名前
?メールアドレス
?連絡の取れる電話番号
応募に先立ち、採用条件等についてご質問がある場合は、上記アドレス宛にお問い合わせください。
【書類選考結果通知】
応募者には応募後1週間を目処に書類選考の結果を通知します。
書類選考に通過した方は、採用面接を受けていただきます。
【採用面接日時・場所】
採用面接は、面談あるいはオンライン(Zoom)の方法で実施します。
方法、日時については、書類選考の結果通知時に調整をさせていただきます。
【インターンの実施について】
採用選考への応募の検討にあたり、弁護士過疎地での業務について深く知りたいという方向けに、インターンも実施しています。
2日間から4日間程度を目安に、弊所の支店事務所で、弁護士の活動全般に可能な限り同行同席していただきます。
過去のインターン生から寄せられた体験記を過去記事に掲載していますので、参考にしてください。
ご自宅最寄り駅とインターンシップ先との間の交通費、インターンシップ中の宿泊費は、弊所が負担します。
ご希望の方は、在間のメールアドレス(zaima@soraumi-law.com)宛にお問い合わせください。
なお、応募人数や時期により、受け入れができない場合がありますので、ご了承ください。
]]>申込みはこちら
https://forms.gle/9x7LT3mZx7s4Mj6g9
弁護士法人かなめ https://kaname-law.com/
弁護士法人空と海 https://soraumi-law.com/
]]>そして私の中の誇張されて浮ついた「過疎地」のイメージとは裏腹に、当たり前のことですが、そこには人がいて、子どもがいて、事業を営む人がいて、困っている人がいて、それを助けたいと思っている人がいました。
相談にいらっしゃる人は、同じ離婚や相続、破産といった類型でも、それぞれ性格が違い、困りごとの語り方が違い、周囲との関係性が違い、別々の個人であるという当たり前のことを改めて感じました。久慈事務所の齊藤先生は、とても謙虚で優しく素敵な先生で、それぞれの依頼者に合わせ説明をし、精神状況も鑑みて解決の順番や道筋を提案されており、それを見て、このオーダーメイド感が町弁としては大事なのだろうと思いました。そして、過去の事件について話す際や期日や相談を受けた後に振り返りをして、今回の成果は何か、もっと良い対応がなかったのかなどを常に考え、そしてそれをインターン生である私にも話してくれました。振り返りの内容はもちろん、その姿勢自体がとても印象的でした。扱っている事件や久慈の町を紹介してくださる時の様子も、笑顔で楽しそうで、この町と弁護士というお仕事が好きなのだろうなというのが伝わってきました。私が、具体的な事件の内容から相談に同席する際に学ぶ視点、先生のその時の気持ちまで、どんなことでも質問をするとたくさん時間を使って丁寧に解説し、一緒に考えてくれました。事務局のお二人と先生との関係性やお互いの信頼感も素敵だなと思いました。
そこに人がいて生活をしているということは都市でも地方でも変わらないことを確認する一方で、これは「司法過疎地」だからこその問題なのだろうということも、新しく学びました。土地に値段がつかないこと、兄弟が多い中で人が亡くなった際にきちんと相続の手続きが取られずに共有の状態となっていること、それを整理するのにコストがかかり、それによって再開発等もされず、または再開発等のインセンティブがないために放置されたままになるなどの負のスパイラルに陥っていることを知りました。誰かが手を入れた方がきっと良くなるとは思いつつマンパワーが足りなかったり、変わりつつあるだろうけれど、やはり制度自体の不備ではないかと思ったりなど、弁護士1人の力だけでは変えられないだろう社会問題を感じました。また、利益相反の問題もそうです。数万人の人口に対して弁護士1人しかいない状況では、困っている人はそこにいるのに早い者勝ちのような状況にならざるを得ない状況も、もどかしく思いました。その他にも、弁護士に頼んでいるということを知られることへの忌避感の強さ(これは一定程度都市にもあるかもしれません)や、女性のあり方など考えさせられることは多かったです。
また、この数万人の町で唯一の弁護士であるということは、やりがいも多いけれど孤独で、そして仕事量としても大変だろうということを感じました。その点において、そらうみ法律事務所が法人化しており、たくさんやってくる事件を他の事務所の人に任せることができること、苦しい事件もくる中でそれを共有できる人がいることは、とても大切なことだと思いました。
もし、ここに弁護士がいなかったら。オンライン化が進んだとはいえ、それを利用できない人もいます。(携帯の電波が通じにくい地域もあるそうです。)それでも、相談にたどり着くことができるのでしょうか。また、その人の問題は法的問題にとどまらないこともあり、その地域の社協などと協力する必要があることもあります。その地域に根ざした弁護士がいるということが、どれだけ貴重で大切なことなのかを感じました。
4日間という短い間でしたが、「司法過疎地」の問題の一端を知ることができました。現地に行って見ていなければ、同じ話を知識として聞いていても、そこに生活する具体的な個人がいるということときちんと結びつかずに、浮ついたものになっていたと思います。たくさんお時間を割いていただき、心配りをしてくださり、本当に貴重な機会をありがとうございました。
(東京大学法科大学院修了 向井佑里)
]]>5日間のインターンシップでは、守秘義務について説明を受け、当事者から了解が得られる範囲で、民事訴訟期日、被告人接見や法テラス気仙での法律相談会、いわて被災者相談支援センターでの法律相談会への立ち会いなどを経験でき、今まで生きてきた中で1番濃厚な5日間になるほど様々な経験をすることができました。
まず、被告人接見への立ち会いは印象に残る貴重な経験となりました。警察署の接見室に入ったとき、ドラマで見る世界にいるような厳かさを感じました。一般面会での接見でしたが、被告人接見は司法修習生になるまではなかなかできない経験であるそうなので、本当に貴重な経験をさせていただいたと思います。
次に、空き時間に事務所に保管された事件記録を自由に見させていただいたのも新鮮な経験でした。実際の事件記録を見るのは新鮮で、これまで教科書などで端的にまとめられた事例を見るのとは全く違うリアルさがあって引き込まれました。民事事件についても、実際答弁書にはこのような事実を書くのだなと思ったり、証拠写真はこのようなものまで提出するのかと感じたり、普段の授業等では学べない側面を見ることができました。
また、私の中では裁判に関わる場面以外での弁護士さんのお仕事の実態がはっきりわからないというのがありました。インターンシップの期間、成年後見に関わる相談では、社会福祉士やケアマネージャーの方と面談をし、刑事事件の場合は、被告人の家族や検察官の方とも連絡を取っている姿を見ました。そのような業務をみて、これまで私が思っていた以上に様々な職業や立場の方とのコミュニケーションが重要になるお仕事だと感じました。先生も相手に合わせて話し方などを工夫しておられるのを横で見て感じましたし、私自身も口癖などコミュニケーションを取る上で注意した方が良いことを教えていただけたのはとても良い勉強になりました。
さらに、お仕事を見させていただく以外にも、陸前高田に行くことができたこと自体、非常に重要な経験だったと思います。インターン期間中には、東日本大震災津波伝承館や震災遺構、奇跡の一本松などにも連れて行っていただきました。私の宿泊した大船渡のホテルは、とてもきれいなホテルで、周りもきれいな街並みが広がっていましたが、伝承館で震災当時のホテル周辺の写真を見たときには息を呑みました。メディアなどでも被災地の様子を見たことはありましたが、実際に自分の今いる場所が震災直後はこのような状況になっていたのだと思うと、メディアなどで見ていた時と比べて何十倍も心に刺さるものがありました。また、復興事業などに対する地元の方々の考えなどにも触れることができ、震災については本当に現地に行ってみないと学べないことがたくさんあると感じました。
そして、毎日食事に連れて行っていただきましたが、本当に美味しいものばかりでした。特に、お寿司屋さんで頂いた白子の天ぷらには感動しました。海鮮が有名な地域であるイメージが強かったですが、前沢牛や秋刀魚だしラーメン、地元の日本酒やワインなどもとても美味しかったです。個人的には、陸前高田出身の佐々木朗希投手がよく行っておられた中華料理屋さんに行けたのも嬉しかったです。
5日間はあっという間に感じましたが、事務局の方などにも本当に優しくしていただき、とても楽しく過ごさせていただきました。また、普段弁護士の方とお話しする機会があまりなかったので、先生とお話しする中で、弁護士として活動される先生のお考えや法律の話、司法修習についての話など非常に貴重なお話をたくさん聞かせていただけました。
今回の経験は、これからの私にとってとても大切な経験になったと思います。この経験を糧に、いつか先生方のような必要とされる法律家になれるようにこれからも精進したいと思います。
(東京大学2年 岸本 一花)
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