陸前高田の瀧上です。
マスコミ各社により報道されていますように、大川小学校訴訟では原告勝訴の判決が出されました。
私も職業柄この訴訟の帰趨には関心を抱いておりましたが、今回、気になる点がありまして投稿することにしました。
この件では、当初の教育委員会や市の対応のまずさが、大きく世間の耳目を引きました。マスコミ報道も、その点に集中するきらいがあったと思います。そして、今回の原告勝訴の判決が出て、溜飲を下げる思いをした人も多いように思われます。
しかし、他方で、すでに様々な場所で述べられていることではありますが、この件は様々な教訓を残しています。
ハザードマップに関する問題、避難場所の指定・整備等に関する問題、学校における防災マニュアル整備や教員の育成等防災態勢の問題、学生・生徒に対する防災教育の問題、さらには市民の防災意識の問題等々、それぞれがとても大きな問題です。
こうした点の改善をはかり、どうやって再発防止に努めるかが、きわめて大きな課題として残されています。
法廷はこうした課題を扱う場ではありませんし、ましてや裁判官が再発防止策を考えることはありません。
また、この種の訴訟は、具体的状況に沿って、被害に対する予見可能性があったか否かを認定することが主たる目的になります。事実の解明も、こうした争点の判断に必要な範囲でなされます。本件で言えば、津波襲来何分前に防災放送があったとか、そういうことです。事件の全体像の解明は、そもそも目的外です。
訴訟は、はっきり言って、上記のような課題の解決にはほとんどならないのです。
この件の教訓によって、少しでも防災のあり方が良くなることを望まない関係者はいないと思います。
判決は一つの区切りにはなりますものの、さらなる課題の解決の取り組みが進むことを望んでやみません。
(陸前高田 弁護士 瀧上明)