陸前高田の瀧上です。
当地でも、当然ですが、刑事事件を担当することがあります。震災復興支援活動だけではないのですね。
最近、逮捕段階で受任しました刑事事件について勾留請求却下の裁判を得ることが出来ましたので、考えるところを述べたいと思います。
皆さんは、刑事事件の被疑者が逮捕されたとき、その後被疑者がどのように扱われるかご存知でしょうか。
被疑者の身柄拘束には明確な期間制限があり、逮捕(最大72時間)→ 起訴前勾留(原則10日間、延長があるとさらに10日ないし15日間)→ 起訴 となります。起訴された後は、起訴後勾留と言って、さらに身柄拘束が続きます。
さて、被疑者の身柄拘束に関してはいくつもの問題点があるのですが、最も大きな問題点の一つとして、勾留期間が長すぎることがあります。一般的な事件では、10日間、あるいは延長されて合計20日間身柄拘束されることが多いのです。しかし、想像していただけると分かりますが、一般的な会社で20日間も休めば解雇される可能性が高いでしょう。
そのため、弁護士としては、被疑者を早期に身柄解放してあげることが重要な活動内容となります。
例えば、勾留の裁判を争ったり、執行停止を求めたり、あるいは被害者と早期に示談をしたり、様々な活動を行い、被疑者の早期の身柄解放を求めるのです。
そうした活動の中でも、通常の場合最も早期の身柄解放を可能とするものが、裁判所に対し、検察官からの勾留請求を却下することを求める活動です。
裁判所が勾留請求却下の裁判を出した場合、被疑者は勾留されずに身柄解放されます。つまり、多くの場合、逮捕の翌日か翌々日に解放されて、家に帰れることになります(逮捕だけだと最大72時間ですからね)。
ただし、裁判所が勾留請求却下の裁判をする確率は非常に低く、統計によると、平成26年は3%弱だったそうです。100件に3件も無いのですね。
今回の件は、比較的軽微な犯罪で、被疑者の身元もしっかりしていたことが良い結果に結びつきました。
もっとも、ここ10年くらいの傾向を見ると、勾留請求の却下率は年々上昇しています。
これまで、裁判所は捜査の必要性のために容易に勾留を認めてきた嫌いがありましたが、これからは被疑者の生活維持に配慮した判断の傾向が定着してほしいですね。
(陸前高田 弁護士 瀧上明)